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稲村月記 vol.13  高瀬がぶん 

「もののふ姫?の棲む森」



 
 
 

2002.5.12(日)曇り時々曇りのち曇り

森の中はとっても静かだ。たぶん木々や腐植土が物理的な意味で俗世間の音を吸収しているせいだろうけど、それにしてもあんな近くに住宅街や道路があるのに、聞こえて来るのは、リスや小鳥やカラスの鳴き声ばかり・・・・のような気がするのは、やっぱり、「ちょっとした別世界」に浸っていたいという自分の心持ちのせいも十分にあって、聞きたくない雑音を無視せよという司令が脳から発せられていたからに違いない。
その点、人間っていうのは本当にうるさくて、月影地蔵の尾根で一人座ってじぃっとみんなを待っていると、ざわざわざわざわと、人の気配が波のように押し寄せて来て、おそらくそこらに潜んでいた小動物たちもいっせいに遠ざかって行ってしまったのだろうと思うと、皮肉なことに、「いやぁ自然っていいよなぁ」とか声高に喋っている私たちの存在が、その自然にとって一番の邪魔者であろうことに気付かさせる。とはいうものの、別に私たちは山を切り開いて住宅地を作っちまおうと思って来たわけじゃないし、歩くくらいは勘弁してもらうことにして、いよいよ鎌倉山から広町の森に足を踏み入れたのだった(それ以前の行程の写真は都合によりなし)。

みんなが森の中を、ずんずんずんずんずんずんと進む。
やがて「鎌倉の尾瀬」とたらばの伊藤さんが勝手に呼ぶ湿地帯にさしかかるころになると、小自然の風景を小満喫しながらもそろそろ小腹も減ってきて、、頭の中には「お弁当箱の絵柄」がすっかり浮かんでいて、中身を想像することしきりの状態に陥っていたのだった。人間っていうのは動くとお腹が空くという単純な事実を、たぶん10年ぶりぐらいに実感した私たちだった(おれだけ?)。
そうこうしているうちに、200坪くらいの開けた草地が現れた。その真ん中へんに、伊藤さん持参の年季の入った風のシート二枚と、保坂持参のそのへんのコンビニで買ってきた風のビーチシート一枚を敷き、みんなが、わやわや、と座る。
それにしても伊藤さんって、よく見りゃ風貌もドラえもんに似てなくもないけど、何でも出てくる四次元リュックサックを持っていて、高級サラミやら鴨の薫製やら、高級かどうかよく知らないけどワインまで出てきてその上、ついに最後まで出ることのなかったコンロまで持っていたらしく、私が見るかぎりチョモランマ登頂セットのような重装備だったのが面白かったし、エラいと思った。
ごはんを食べ始めると、新種発見か!と思わせるような、なんだか見たことのない小さな虫が色々やってきて、おむすびやら卵焼きやらにたかっていたけれど、その中に混じって普通のハエがいたことに愕然とし、なんだやっぱりここは住宅地の隣なのだと思い知らされたのだった。
楽しい山歩きもあっという間に終り、やっぱり「ちょっとした別世界」だから、そんなに長く歩ける距離はないわけであって、やがて私たちは西鎌倉の住宅地へと抜けた。
そこからみんなはモノレールに乗って江の島駅まで行き、江ノ電に乗り換え、再び出発点の稲村が崎に帰ってきたわけだけれど、あいにく私は別行動だったので、その間のリポートはできない。
最終目的地の稲村が崎公園の東屋付近でしばし休息というか、最後の時間を過ごす。
そこへ再び合流するも、今度はそこへ、よねちゃんとそんちゃんの赤ちゃん登場! 
名前は諭那(さとな)という男の子。二人が保板に登場したときはまだ二人は結婚もしていなかったわけで、こうして赤ちゃんまでできちゃうわけだから、落胆とはまったく逆の意味を持つ溜め息も出る。
「ふぅ、そうかぁ、そうだよねぇ」
諭那を回し抱きしながら、おそらくみんなも私たちが共有した特別な時間、「保板に時間の流れる」みたいなことをぼうっと考えていたのではないだろうか。
そんなみんなで,はいパチリ!
もうすぐ掲示保板を一時閉鎖するし、メルマガもお休みにするからと思うと、やっぱりなんかもう永久のお別れのような気もしてきて、「今度は違った形で再開しますから!」と、声をあげてみても、それは、「いいわよ、今度デートしようね」と、アテにならない「今度」を連発する無責任女のように思われてやしないかと、そんな不安も感じている。
だから、ちゃんと再開しますから! と固くお約束しておきます・・・・。
だって退屈だもの


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