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◆◇◆    メールマガジン【いなむらL7通信】 第2号      ◆◇◆
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                        2001/4/20 vol.02

                編集部より
みなさんこんにちわ、
作家・保坂和志の公式ホームページを主体とした「いなむらL7通信」も0号、
1号と順調に読者数が増えてきました、ほんとうに、ありがとうございます。
どんどん読みごたえのあるものにできるように、と考えているんですが・・・
そこで、みなさんにお願い!
保坂さんの本を読んだ感想、要望、率直な意見(もちろん反論でも)、
遠慮しないで送ってきてほしいのです。もちろん、保坂ホームページの
掲示板に書き込むのも大歓迎。プロの作家である保坂さんに対して、
「こんなこと書いてしまって、ちょっと失礼じゃないのかなあ・・・」なんて
遠慮したりしないで下さい。インターネットだからこそできる意見のやりとり
のチャンスを目一杯使ってゆきましょうよ。そして、それがこういう場を提供
してくれる保坂さんの原動力になるんですから。
前に「ヒサの旋律の鳴りわたる」の感想文のときに、「プロの評論家の書くも
のは読んでいるあいだの気分が伝わらない」という意味のことを書いていまし
た。保坂さんは、プロのそういう批評より、感想! の方を知りたいんだと思
います。
掲示板に書いてくれている人たちは、「いなむらL7通信」を購読している人
数の30分の1以下です。
掲示板に書き込んだことがない人たちも遠慮しないで書いてくださいね。
それから、掲示板にいつも書いている人が、「知られちゃってて恥ずかしい」
のなら、HNを変えたっていいんじゃないかと思います。
どしどしメール送って下さい、待ってます! (keito@k-hosaka.com)

毎月20日の月1回の配信、どうぞよろしくお願いいたします。
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■■■          芥川賞作家・保坂和志公式ホームページ        ■■■
■■■          http://www.k-hosaka.com            ■■■
■■■   未発表小説『ヒサの旋律の鳴りわたる』をメール出版中!  ■■■
■■■    http://www.k-hosaka.com/sohsin/nobel.html      ■■■
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★☆★----------もくじ--------------------------------------------★☆★

■今月の特集【訪問】
 写真家・斎門富士男氏の葉山のご自宅へ(飼い猫32匹!!)
■連載【小説論番外編】vol.03 いつ果てるともない会話  保坂和志 
■連載【ネコラム】vol.03 「どうしてお前は・・・」 がぶん@@
■今月の【わたしのオススメ映画・舞台・音楽】(文・オススメ人) 
 ◆(音楽)フィッシュマンズ『WALKING IN THE RHYTHM』(文・チイ)
 ◆(映画)『独立少年合唱団』監督・緒方明(文・むん坊)
 ◆(音楽)渋さ知らズ(オーケストラ)(文・ご隠居)
■今月の【わたしのオススメ本】(文・オススメ人)
 ◆『宇宙は自ら進化したーダーウィンから量子重力理論へー』リー・スモー
  リン著、野本陽代訳/NHK出版(文・よ)
 ◆『おかたづけ天女』犬丸りん(著)、角川書店・角川文庫(文・めざ)
■連載【稲村月記】vol.02 高瀬がぶん
■連載【興味津々浦々】vol.03「ジャパニーズ・ガウンの巻(2)」春野景都
■編集後記
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               ★次号特集予告★2001/5/20 配信予定
     <麻布十番、茶藝楽園の森田学さんに教わる中国茶の極意>

 現代茶人の間ではかなり有名なひと、森田マジックと賞される
 彼の中国茶を飲むと、身体中に春の山の息吹きが入ってくるって・・・
 やっぱり、うわさはほんとうだった。
 ◆森田学プロフィール(茶藝楽園・店主)
 香港の友人、陳國義氏との出会いから、茶に親しむ。喫茶の持つ様々な側面
 を世に知らすべく、その魅力を伝えている。
 特に「ティーセラピー」としての可能性を重視、その実践を模索している。
 積極的に茶会を催し、淹茶技術には定評あり。茶葉の個性をいかに引き出す
 か、又、いかに自分「らしく」愉しむかをテーマに、茶藝指導を行っている。
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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆今月の特集◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
             
■【訪問】写真家・斎門富士男氏の葉山のご自宅へ

ポチ、、だれもが犬だと思ってしまうような名前でしょ。でも、このポチ、斎
門さんが1600坪の敷地内に猫を飼うようになったきっかけの猫なのだ。現在、
住みついてる猫たぶん30数匹(このところ、ベビーラッシュで生まれたばかり
の子猫たちもいるの)。この9年間の延べ数にすると100匹を越すんだそう。
斎門富士男さんは葉山に住む写真家で、猫専門の写真家というわけじゃないけ
れど、去年出した写真集「CAT GARDEN」はすっごくかわいい。すっごくかわい
いなんて誰でも、何にでも言えそうな表現だけど、すっごくかわいいって表現
以外思いつかないほどぴったりで、憎たらしい顔でベロ出して寝そべってる子
も、見たことないほど猫相の悪いケンカしたあとのポチの顔も、暗がりのベン
チで交尾している二匹も、大皿で総勢30数匹が一同に介してごはん食べてる図
もどれをとっても、すっごくかわいい。

・・・・・・つづきはWEBページで・・・・・・
◆◇◆この続きは参照写真付きの、以下のWEBページでお楽しみ下さい◆◇◆
        http://www.k-hosaka.com/inamura7/saimon/saimon.html
                    
◆斎門富士男プロフィール
1960年、大阪生まれ。大阪写真専門学院卒業後、アメリカ、インド、ネパール
をきっかけに、中国、東欧、西欧、イスラエル、モスクワなどを旅することに
より、ポートレイト写真に出会う。中国人を撮影したパルコ出版の「CHINESE 
LIVE」をスタートに、写真集の出版活動に力を入れる。
世界の子供達を収めた「STAR KIDS」は展覧会とともに大きな話題を集めた。
その後、常に新しい挑戦を自らの課題とし、時代の中でリアルに生きる女性達
や、東京の夜のスナップ、風景などをテーマに多くの写真を生み出している。
同時に、カラープリントを手掛け、撮影した写真に独特の個性を生み出すこと
を試みている。(斎門富士男HPより引用)
        http://www.saimonfujio.com/main.html
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■連載【小説論番外編】vol.03 いつ果てるともない会話  保坂和志

最近ホームページの記事(「創作ノート」と「小説論」)を更新できなくて、
困ったり後ろめたく感じたりしているのですが、長い小説を書きはじめると「
やっぱりしょうがないのかな」と思う。そうは言いつつ、「創作ノート」と「
小説論」が進まないことには、ホームページをつづける本当の意味はないんじ
ゃないかと思う……。私はホームページを作って、それを持続させる意味がま
だ見えていなくて、「意味はない」のかもしれないし、「いつまで持続させて
いっても意味は見えてこない」という性質のものなのかもしれないけれど、少
なくとも、自分が中心と考えているものをきちんとやってみないことには、「
ない」も「ある」も「あったとしても見えない」も、言えない……。

新しい小説を書きはじめたのは、去年の10月末だった。具体的に何も固めず
に書きはじめるのはいつものことで、書いているうちに“軸”が生まれてくる
だろうと思っていたのだけれど、とうとうそれが出てこなくて、180枚ぐら
い書いたところで、最初から書き直すことにした。2月はじめのことだ。理由
はいくつか考えられるけれど、その一つがホームページの掲示板だった。掲示
板というのは、前号のこのエッセイに書いたように、普通に書いて読むのとも
違い、普通にしゃべるのとも違う。掲示板に誰かが書いたこととそれに対して
こっちがどう書くかというのが、なんだか一日中頭の隅にあって消去できない。
幸い私たちのホームページには不愉快な書き込みがないけれど、なくてそれだ
け頭から離れない。
しゃべるという行為は耳と頭と口で処理される。それに対して掲示板は目と頭
と手(目?)で処理される。耳で聞くのと目で読むのの回路の違いと、その回
路に対して不慣れという問題があるのだと思う。目から入る情報としては私の
場合には文芸誌などに載る批評がある。批評もいい加減なことを書かれると相
当アタマにくるけれど、掲示板のように「すぐに反応する」という前提がこち
らにないから、反応を考えないために頭から消えてゆく。評論家や小説家の中
には自分のことを書いた批評にいちいち反応する人がいるけれど、私にはそう
いうつもりはほぼない。ところが、掲示板だと(自分が中心にいるというせい
もあって)「どう反応しようか」というのがなんだかずうっと頭にある。
 そういうわけで、私は2月中頃から、基本的に掲示板は読むだけ、「書く
ことを考えずに読むだけ」という立場にいることにした。そうすると、掲示板
のことは簡単に頭から消えた。というか、頭に残らなくなった。「読む」とい
う行為は同じようでも、「書く」のを前提として読むのと前提としないで読む
のとでは、頭の使われ方が全然違っているのだと思う。(これを敷衍すると、
書くのを前提として読む評論家と前提としない読者の読み方は違う、というこ
とになる。)

掲示板とのつきあい方を変えて(1)、小説を少しは固めてから(2)あらた
めて書きはじめたら、だいぶ調子が出てきた。「こういう風に書いていたんだ
よなあ」と思いながら書いている(もっとも、この(1)(2)のどちらかは
原因にはなっていないのかもしれないし、どちらも原因なのかもしれないし、
どちらも原因ではなくて別の原因が本当はあるのかもしれないけれど)。さて、
ここからがやっと本題。

今書いている小説は、『プレーンソング』のような『季節の記憶』のような小
説です。つまり、登場人物たちがいつ果てるともなくしゃべりつづける。この
「いつ果てるともなく」というのは、おそらく私の小説の際立った特徴で、具
体的に誰がそう評したのかは思い出せないけれど、一度ならずそのように評さ
れていると思うし、私自身、そういう批評にまったく異存はない。
で、それを書いている期間、私自身の中ではどうなっているかというと、私自
身の中でも人物たちは「いつ果てるともなく」しゃべりつづけている。著者で
ある私自身でさえも、「いったいどこで終わらせて、場面を切り換えればいい
んだろう」と半ば不安を感じながら書いている。――というと、私がすらすら
と、出てくる会話を書きとどめているかのように思われるかもしれないけれど、
実態は全然そうではなくて、何をしゃべらせるかいちいち苦労しながら、考え
考え書いている。しゃべり過ぎればカットする。横道へのそれ方が、あまりに
も横道だったらそれもカットするし、あまりにあざとく意味をしゃべっている
と感じたらそれもカットする。

しかし、カットするという作業はそれほど難しいことではなくて(3日なり4
日なりかかって書いたものを切るのは残念ではあるけれど)、どういうことを
しゃべるかが、とにかくなかなか出てこない。当たり前だけれど(当たり前だ
と思っていない人もいるかもしれないけれど)、どれ一つとして実際にしゃべ
られた会話はない。

そういうわけで、「この人たちがどういうことをしゃべるか」という課題(?)
が、一日中私の頭の中で、車のアイドリングのようにつづいていくことになる。
私はひたすら会話の維持に心を費やしている。私は猫たちと遊んだり、横浜ベ
イスターズの試合を見たりする現実と平行して、小説の人物たちがしゃべって
いる世界が存在しているように感じる。ずうっと電話でしかしゃべったことの
ない相手でも、いつかなんとなくその人の姿かたちが視覚的なイメージとして
生まれてくるものだけれど、私が小説を書いているときも、そのようにおぼろ
げな姿かたちが生まれていて、いろいろなことをしている合間合間に、彼ら・
彼女らが会話をはじめている。つまり、まさに、著者である私自身の中でこそ、
最も「いつ果てるともなく」という状態が起こっている。
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■連載【ネコラム】vol.03 「どうしてお前は・・・」(がぶんの巻)

今まで数え切れないほどの猫に接して来たけれど、あれほど狂暴な猫に出逢っ
たことは今までに一度もなかった。
藤沢の鵠沼海岸という所に住んでいた頃の話だが、その猫を飼っている友人の
家は、引地川の河口にほど近い土手に貼りつくようにして建っていた。
その猫がどれほど狂暴かというと、例えばボクが遊びに行ってコタツ(掘りご
たつ)に足を突っ込んだとたんにバリバリバリガブッ!
ま、これはある意味で当然かもしれない。気分よく眠っているところにいきな
り人間の足が降りて来るのだから、気分のよかろうハズはない。
でもそれだけじゃない。家の中をごく普通に歩いていても、柱の影から突然ヤ
ツは飛び出して来て、やっぱりバリバリバリバリガブッ!。
こう書くと単にじゃれるのが好きな猫のようにも思えるかもしれないけれど、
決してそうではない。勢い余って本気になるのではなく、初めからマジに攻撃
してくるのだ。何かトラウマがあるのだろうけれど、とにかく常に人を射貫く
ような目つきで無言のままうずくまっていて、飼い主であろうとなかろうと、
人を見るやいなや因縁をふっかけてくるのだから変っている。そんなに気に入
らないのならいっそ人間に飼われなければいいのに、とも思うのだが、なぜか
その家の飼い猫におさまっているのが不思議だった。
「まったくイヤな猫なのよー!」というのが友人の口癖だったが、ある時、つ
いに堪忍袋の緒が切れ、その猫を捨ててしまったという話を聞いた。なんだか
んだと言いいながら、数年間飼っていた猫を捨てるというのも、それはそれ
で切ない話だが、三人いる小さな子供の手足の傷が絶えないということなので、
それもまた仕方のない選択なのかもしれないと思ったものだ。
捨てた場所は東京の町田市ということだった。それにしてもずいぶん遠い所を
選んだもので、町田と言えば鵠沼海岸からおよそ40~50キロくらいは離れてい
る。友人によれば、とにかく近くに捨てるのが嫌で車でウロウロしているうち
に、なりゆきでそうなったということだった。

・・・それから数ヶ月たったある日、たまたまその家に遊びに行った時のこと、
な、な、なんと、いつもの柱の影からヤツがじぃーっとこっちを睨んでいるで
はないか。
「どうしたの! また拾いに行ったのかよ?」
「そうじゃないのよ、こないだ帰って来ちゃったの・・・」
「えーっ、だって東京に捨てたんだろ」
「そう、でも帰って来たのよ自力で・・・しかもこんなに太って、はははは」
友人はそう言って力なく笑った。
話を聞けば、捨ててからちょうど半年経った頃に、ひょっこり玄関に姿を現し
たのだという。最初は信じられなかったそうだが、どうしたってあの子に違い
ないと・・・。もちろん、このボクが見ても太ったとはいえやっぱりヤツに違
いなく、隙あらば襲いかかってやろうという鋭い眼差しもまさしくヤツそのも
のだった。それにしても、あれほど飼い主に嫌われているのに、なぜ再び帰っ
てくる気になったのだろうか? それに、いったいどうやってこんな遠くまで
帰ってこれたのか?
ここからは推測なのだが・・・おそらくヤツは、川から川を下流にたどること
でこの家まで帰り着くことができたのではないか。そう、東京の町田市には東
京都では唯一相模湾に流れ込む境川の上流が流れているのだ。
そしてそれをそのまま河口まで下ると江の島付近に出るので、そこから我が家
がある引地川河口までは、茅ヶ崎方面に向けて猫の足で歩いても(迷わなけれ
ば)15分ほどで着くはずだ。それとも、途中の大和市で引地川の源流を発見
し、そこから乗り換え、直接我が家を目指したのか?
どちらにしてもたいしたもの、という他はない。ヤツは捨てられた場所から一
本の川を発見し、「あ、確かうちの隣にも川があったじゃねぇか、ふふふ、こ
れで帰れるぜぇ!」と思ったかどうか知らないけれど、放浪を重ねながら、半
年かけて見事この家まで帰り着くことができたという次第・・・。
その後は、さすがにもう捨てるのはしのびないと、四六時中猫の攻撃に脅えな
がら友人一家は暮らしていたのだが、ある時、その友人の同居していた父親の
癌が悪化し、ほどなくして亡くなるという悲しい出来事が起こった。ボク個人
もとてもお世話になった人なので、訃報を聞いてすぐに駆けつけ、花を一輪遺
影に添えて(クリスチャンだった)冥福を祈ったのだが、そこに友人がやって
きて、涙を拭きながらこう言った。
「おとうさん今朝病院で息をひきとったんだけど・・・でもねぇ不思議なの、
うちのダンナがちょうど同じ頃に、あの猫が家の中で死んでいるのを発見した
のよ。別におとうさんに可愛がってもらってたっていうわけでもないし、って
いうかお父さん猫だいっきらいだったしねぇ」
・・・・うるうる、ほんとに、お前はどうして???
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         http://www.k-hosaka.com/maga.html
上記URLで登録・削除ともできますが、創刊号0号より申し込んだ記憶がない
にもかかわらず配信され、尚且つ、そんなもの読みたくない!、という方が
おりましたら、ごめんどうでも以下メルアドまで「よせ!」とメール下さい。
また、こちらの手違いで二重配信されている方がおりましたら、これまた誠に
申しわけございませんが、「やめろ!」と、メールにてお知らせ下さい。
          gabun@k-hosaka.com 高瀬がぶん
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        今月の【わたしのオススメ映画・舞台・音楽】

■フィッシュマンズ『WALKING IN THE RHYTHM』(Polydor)
フィッシュマンズの歌詞には「歩く」がよく出てくる。彼らの「歩く」は変な
言い方だけど「歩く」というアクションそのもので、他に意味はない。わかり
やすい例で言うと『上を向いて歩こう』の「歩く」とは違う。だからそのレベ
ルで「歩く」は「走る」でもないんだけど、そんなことはここでぼくがゴチャ
ゴチャ言わなくても曲を聴けばわかる、と思う。
『WALKING~』には「歌うように歩きたい」というフレーズが出てくる。この曲
で「歩く」は急に抽象的になってしまった。これまでの「歩く」はゆっくりで
も進んでいる感じがあったけど、この曲の「歩く」はもう進んでいるのかもわ
からない。進むための「歩く」でさえないのかもしれない。ただしこの曲でも
「歩く」がアクションから離れることはない。『WALKING~』はフィッシュマン
ズの新しい「歩き方」だ。(オススメ人/ちい)

■映画『独立少年合唱団』 監督・緒方明
70年代初頭の時代を背景とした、キリスト教系(プロテスタント)の「独立
学院」という学校のお話なのですが、タイトルのイメージとは違い、なかなか
エンターテインメントしている作品です。
ウイーン少年合唱団、骨まで愛して、学生運動、ポールシュカポーレ、革命・
・・どれもこれもが当時を表すノスタルジックな「記号」で、特に最後には派
手に爆死してしまう学生運動の女性闘士なんかは「いたいた、あーゆーの」と、
当時を知っている世代にはシビレものです。
ナイナイの岡村似の主人公と若かりし頃の京本正樹似の、ちょっと妖しげな少
年同士愛の雰囲気ありぃの、学生運動家の成れの果て感たっぷりの男女の描か
れ方も秀逸。そんなお兄さんお姉さんにカブれてしまう主人公の短絡さもかわ
いい。その主人公が言う「忘れていることと覚えてていること、どっちが大切
なんだろう?」という言葉が、とても印象的。ところで、緒方明さんて、保坂
さんのお友達なんですよね! (オススメ人/むん坊)

■渋さ知らズ(オーケストラ)
ジャズ畑で活躍しているベテランから無名の若手ミュージシャン、セクシーな
ダンサーや舞踏家、アングラ役者や舞台美術の人間まで実にいろんな人種がゴ
チャゴチャになって何人いるのかわかんない。フリージャズよりもフリーなジ
ャズって感じか?ファンク、ロック、演歌を含めた民族音楽までレパートリー
としている。
3年程前にドイツのジャズ祭で演奏したときは地元マスコミが「お前らはいっ
たい何なんだ?宗教か?部族か?」と首をかしげてしまうような集団。ジャズ
評論家はイロもの視して相手にしてくれないんだけど、そんなことは全くおか
まいなしに盛り上げてくれる。
音楽の純粋な楽しみ方ってきっとこんな感じだったのだと聴いた誰もが思うの
だろう。彼らの噂はジワジワと浸透していて、今年はなんと富士ロックフェス
ティバルにも出てしまうのだ!マジな話、こんなオーケストラは世界中探した
ってちょっといない。(オススメ人/ご隠居)

          今月の【わたしのオススメ本】
         
■『宇宙は自ら進化したーダーウィンから量子重力理論へー』リー・スモーリ
ン著、野本陽代訳/NHK出版
実はまだ4分の1くらいしか読んでないので、この本がこの先どういう風に展
開してどういう結論になるのかまだ知らないのだけれど、それでも始めの数ペ
ージを読んだだけでわたしはこの本のことをすごく気に入って、誰かに紹介し
たくてしかたなくなった。きっと保坂さんの文章が好きで、かつ世界(宇宙?
)観みたいなことに興味がある人なら好きなんじゃないかという気がする。
筆者は理論物理学者で、相対性理論と量子力学の理論を矛盾なく融合させたい
という願いを持って研究を続けてきたらしくて、この本はこれまでの筆者やそ
の同業者たちの長年の研究から筆者が得た宇宙観を紹介している。わたしは物
理学の難しい議論はよく判らないけれどそれを無視して読み進んでも充分楽し
いし、筆者の「あらゆる可能性に対して公平であろうとする」姿勢が好き。と
はいえ、彼の唱える新しい理論(まだ読んでないけど)は眉にたっぷり唾つけ
て聞くのが、たぶん吉。(と思う。)(おすすめ人/よ)

■『おかたづけ天女』犬丸りん(著)、角川書店・角川文庫
心が疲れた時、人は広々とした風景を見る。海辺に出かけたり、小高い丘から
大地の広がりを眺めたりというように。悩みで肥大化した自分と大きな空間を
対比させることによって、心の解放を得るのではなかろうか。残念ながら多忙
な日々のなか、心の赴くままに広大な風景を眺めるわけにはいかないのが現状
なのだ。けれども、そういうときには『おかたづけ天女』である。ヒーローも
ヒロインも登場しない。
「ごく普通の人々がどこにでもありそうな」という線から一歩踏み込んだ出来
事を引き起こす。やがてあなたは、悲喜こもごもの事件がこらえきれない笑い
を誘いだすということを知る。電車内で読み始めて、不覚にも「くくく…」と
肩を震わせる。自分とさほど変わらない登場人物たちを見て、閉塞した精神は、
息苦しさを伴ったカタルシスにより夜空に解き放たれるのである。
今なら、もれなく笑いによる免疫力増強効果ついてます。健康増進にこの1冊!
(オススメ人/めざ)
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           読者投稿【わたしのオススメ】コーナーのお知らせ
 みなさんのお気に入りの本、映画、音楽、芝居、飲み屋、雑貨、漫画など、
 なんでもありのオススメ文を募集します。
 字数は本文のみ(題名、名前、出版社などは別)400字以内
 オススメの理由や感想など書き方は自由ですが、自分らしいものをお願いしま
 す。一応その月の〆きりは毎月10日、構成その他の都合上、必ず載るとは限り
 ませんが     keito@k-hosaka.kom まで、待ってます。
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■連載【稲村月記】vol.01(フォトコラム) 高瀬がぶん

いつも通る道で、なんか気になって仕方がないという場所がいくつかあって、
そこを通るたびに、なんとなくそっちに視線が行ってしまうのだけれど、かと
いって立ち止まるわけでもなく、ツツーッと通り過ぎてしまう。
そんなことを幾度となく繰り返しているのだけれど、ちょっと立ち止まってみ
ることにした。
(1)日限地蔵尊(2)オープンマインドハウス
※写真付きWEBページでお楽しみ下さい。
 http://www.k-hosaka.com/gekki/gekki02/gekki02.html
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「ジャパニーズ・ガウンの巻(その1)」を読んでいない方はこちらから。
     http://www.k-hosaka.com/inamura7/ina01.html#silk
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■連載【興味津々浦々】vol.03
         「ジャパニーズ・ガウンの巻(その2)」春野景都

チョウ子さんが椎野くん、椎野くんというので、わたしの頭の中で勝手に椎野
くん像ができあがっていたんだけれど、会ってみると、わたしなんかが「椎野
くん」と、君づけで呼べるような感じではなくて、割腹のいい年長の紳士だっ
た。椎野さんは聞く所によると、大きな音楽関係の会社を経営している社長さ
んらしい。チョウ子さんと椎野さん、それにチョウ子さんの古くからの友人で
モード系ファッション雑誌の編集長であるエムさんが加わり、泡盛の古酒(ク
ースー)を飲む前に冷たいビールをいただいた。前菜ででてくるアダンやオオ
タニワタリなどの島野菜やお魚は見たことも食べたこともない沖縄独特もので、
聞いたことすらなかったけど、おつまみにぴったり。お腹がちょっと膨れると、
少し、緊張がほぐれてきた。こんな秘密の隠れ家みたいな、でも高級そうなお
店で、はじめて会う人と会食するということも、しばらく子育てにあけくれて
いたわたしにはそんなに頻繁にあることじゃなかったし、といって、別にお見
合いで男性に会うわけじゃないのだから、緊張するのも変だけど。もしかする
と緊張というより、頭に思い描いていた椎野正兵衛のことでわくわくしていた
のかもしれなくて、いつもとはちょっと違った心持ちだった。でも、とにかく
見た目よりも椎野さんはずっとフレンドリーでなんでも気さくに話してくれる
人で、ほっと一安心。椎野さんが何にも話してくれなかったらこの話は進まな
いんだから。
「椎野正兵衛というシルク商人がわたしのひいじいさんだってことは、なんと
なく聞いたことはありましたよ、まあ、そのことに興味を持ち出したのは数年
前なんですがね」
1996年に「モードのジャポニスム東京展」が開かれた(もともとの開催は1994
年、京都国立近代美術館に於いて)。その展覧会の模様がNHKの特集番組で放映
され、その中で椎野正兵衛が紹介された。何気なくそれを見ていた友人が椎野
さんに連絡し、うまい具合に再放送があったので録画して、見てみると自分の
ひいじいさんがなんと写真付きで出てくるではないか。それまで、椎野さんは
ひいおじいさんの顔を知らなかった。しかも、横浜開港と同時にさかんになっ
た外国への輸出品のなかで絹織物はとてもおおきな役割を果たし、椎野正兵衛
はその礎を築いた重要な人物だというのである。
「あ、これ、これ、、」
わたしと同じようにチョウ子さんから、椎野さんの話を聞いたエムさんが、探
したらでてきたというモードのジャポニスム展のカタログを出してきた。
椎野正兵衛の写真は出てなかったけれど、椎野正兵衛店がつくったというシル
クのガウンが載っている。惜しいことに後ろから横にかけてのアングルで正面
が見えない。輝くような羽二重に細かく施された手指しのキルティング。1870
年代に欧米の室内着として典型的なスタイルで、どんな形かと言うと袖位置が
低くつけられたているのでほっそりと丸みがある肩線になっていて、特徴的な
のは、昔の映画に出てくるようなお尻のところがぽこっとふくらんでいて、裾
をひきづるような形になっているところ。17世紀なかばから鎖国が続き、1859
年に横浜が開港になるまでは、たったひとつオランダの東インド会社の交易が
許されているだけだった日本で、丸まげに着物が主流の日本人が、開港後10数
年の間に作り出したとは思えないほどファッショナブルなドレッシングガウン。
金茶にふちが紫と緑、、色合いもほーっとするほどきれいだ。これが椎野正兵
衛のジャパニーズガウンなのね。なんだかわたしは見たくてたまらなくなって
きた。
「実物は見たことあるんですか?」
「いや、ないんですよね、このモードのジャポニスム展を主催した京都服飾文
化研究財団の深井晃子さんが書かれた本の中にも椎野正兵衛が出てくるんです
が、実物のガウンは見たことがないんですよ」という椎野さん。
それにしても、椎野正兵衛のシルクということに出会ってから、アンティーク
のギャラリーから送られてきたDMの「民俗の物語、つややかな絹」なんていう
のが目についたり、群馬の農家が色付きの蚕の飼育に成功したというニュース
を耳にするようになったり、なんだか不思議。
そして、椎野さんに会ってから数週間経って、チョウ子さんから連絡が入った。
「京都におもしろい長襦袢やさんがあるのよ、今の長襦袢はほとんど無地だけ
ど、以前はものすごくカラフルな模様の入った長襦袢もあってね、それが大量
に見れるんだって。今度の京都でのお花見は、桜も咲いてなさそうだし、織り
と染めの旅にしよう」
ということで、京都に行くことになったので、ふと、思い付いて、椎野さんが
言っていた深井晃子さんに電話してみた。
「もし、もし、京都服飾文化研究財団の深井さんですか?椎野正兵衛のジャパ
ニーズガウンは見ることができるんでしょうか?」

                        (つづく)
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作家保坂和志さんの作品を題材にしたメールマガジンです。でも書評のメルマ
ガではありません。保坂和志さんを研究(?)するメルマガでもありません。作
品の感想を書くことはあると思いますが、感想だけではありません。
それじゃいったい何なんだ? 発行人「あかま」のつぶやき? 読者の方との
交流? なんでもありのメルマガ? 発行人・ぴょんかつ、こと(あかま)
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■編集後記
 ●でもさ、どうして犬猫が嫌いな人っているんだろう?。(がぶがぶ)
 ●近所の猫が今日もまた牛乳を飲みにきた。(ほさか)
 ●梅の木に77個の梅の実がなってた。数えるのはけっこう大変。むりやりラ
  ッキーセブンにしたけど、63個かもしれないし82個かも。(けいと)
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2000/04/20 vol.02 メールマガジン【いなむらL7通信】2号
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