その1はとりあえずここに

その2はここです

その3もまだここです

その4もまだまだここです

その5もまだまだまだここです


その6もまだまだまだまだここです


その7もまだまだまだまだまだここです

その8もま〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜だここです

極楽月記特別編「さすらう庭師小野」

その1

「ここからまた始まる、前編」




今月からは「稲村月記」変じて、「極楽月記」となりました。
そりゃそうだ、もう稲村じゃなくて極楽寺に住んでるんだから。
極道月記じゃないんで間違わないように!
その名も第二極楽荘、もうボロボロで、なんともいい具合の名前だこと。
いま○時1分、9分、13分、21分、25分…と、何時台かは別として頭が分刻みになってきた今日このごろ。それはこの部屋から見える江ノ電の通過時間なわけで、家に居るかぎりこのリズムが繰り返される。そんな折、リスのバリゾウ君(さっさと命名)がやってきて、ボクがほうり投げる大好きなピスタチオをがりがりがりがりがり。この直後にはたぶん夫婦の相方と思われるバリ子もやってきて、二匹でがりがりがりがりがりがりがり。
(バリゾウなんだから、がりがりじゃなくてばりばりだよな、今気がついたけど)

     
               

しばらくすると左隣人のオニイチャン(行きつけのマハロデリのマスターの兄なのでそう呼んでいる)が庭からやってきて、犬のウンコ踏んじゃったと嘆く。バイクとめてる所だから気をつけて下さい…忠告ありがとう。

右隣人のニュージーランド帰りの植木屋さんのオノ君は、やっぱり手先も器用で、練習だといって竹垣を作り、庭の離れにある風呂場に行くのに、靴脱がないで行かれると便利だからと、ボクの部屋とオニイチャンの部屋からさらにお風呂場へつなげるように、ながーい縁台を作ってくれた。まずボクが材料の材木とブロックを買ってくると、ボクの部屋の前に縁台を作ってくれ、次に、オニイチャンが同じ店で同様に材料を買ってくると、その日の夜にちゃっちゃと続きの縁台を作ってくれた。おまけに、夜間用の自前のライトまで装着してくれたので、これでお風呂生活は完ぺき。
で、庭がけっこう広いので、オノ君はボクの部屋の前に水仙の球根を植え、花畑に変えようとやっきになっている。鉄柵の土台のブロックがみっともないのでなんとかしたいというので、相談の結果、ボクが資材を購入(たぶん5000円くらい)し、オノ君が木製の花壇枠を作ることに決定。などと、庭改造計画を考えていたら、いいことを思いついてしまって、今や、その研究に余念がない。それは、花壇の横にドラム缶風呂を作ろうというものだ。ウェブサイトにはいくらでもそんなHPがあって、見ればなんとか作れそうなので、今年一杯の完成を目指している。それともうひとつ、ドラム缶風呂の隣にレンガを積んでバーベキューセットを設置する。この夏の週末にはいつも住人みんなが集まって毎週バーベキューをやっていたそうで、ついでだからちゃんとしたやつを作っちゃおうということに。
         
         
オノ君御近影
右上隣のナンシーこと古川君は極楽寺駅横のやってんだかやってないんだかでもちゃんとやってる自転車屋兼バイク屋に勤めていて、というか詳しく聞くとボランティアで勤めている!?という。
で、どうやってお金を得ているかというと、自分で買ってきたボロ原チャリを直して(腕はぴか一)、それを売って凌いでいると。というわけでボクもその店でちょい乗り用の原チャリを購入。38000円也。道路脇にズラ〜ッと捨ててある(かのような)自転車と原チャリの山は、なんとすべて売り物で、雨ざらしなどなんのその、その中からナンシーお勧めの一台を選定。でもこれ、ナンシーの持ち物だったのかどうか聞きそびれた。
その店にいるもう一人のイチロー君っていう人は、なんでもハーレーのカリスマという異名を持つ、日本でも指折りと言われるほどの腕を持ったエンジニアだそうで、その割にこの店にいるくすぶり具合が素敵。あ、イチロウ君は、いまボクが住んでいる部屋の前の住人だそうだ。
そのイチロウ君がずっと前に子供のアイガモをどこかで買ってきて、それがすっかり大きくなっちまって、手に余り、結局ナンシー君に譲り、ナンシー君はそのアイガモを部屋で飼おうと思ったそうだが、とにかく鳥は食べたものをすぐウンコで出すという性質(空なんか飛べないくせに)があるもんだから、しかたなく、夜は車の中で飼い、昼間は店まで連れてって路上で水浴びなんかさせながら飼っている。このアイガモの名前は「ふね」という。ふねはけっこう可愛くて、指で頭をなでると、ぐーっと押してきたりして、ほっぺを叩くとちょっと怒って指をついばんだりする。
         
          
         


ボクの部屋の真上に住んでいるのは学生結婚してるカップルだそうで、旦那の方はサーファーでボクが開けっ放しにしているドアの外から「こんちわー!」と、最初に挨拶してくれた人物。その奥さんとはまだ会っていない。


          
山に染み込むように沈む夕日

左隣上には27、8歳の女性フォトグラファーが住んでいて、こないだ外にいたら愛想よく「こんばんわー、あ、今度新しく来た人ですか? 私、石田っていいます。よろしく!」と言ったかと思うと、自分のバイクにまたがり「じゃ、行ってきま〜す!!」…って、夜の10時にどこにさ!?
ある夜、縁側でオニイチャンとオノ君とボクの三人でドラム缶風呂製作計画を練っていると、二階の窓から石田が顔を出したので、「あっ、こないだオレ自分の名前いうの忘れたよね」というと、「えー、『がぶがぶ』でしょ」だと。んー、どこで聞いたんだこいつ。
その石田が、「半ズボン食べるぅ?」とびっくりするようなことを言って、二階の窓からヒモ付きの袋をずるずると降ろしてきて、中を見るとバナナ数本と得体の知れない食べ物が入っていた。で、商品名を見ると…なんだよ、「半ズボン」じゃなくて「あんず棒」じゃんか。でもさ「あんず棒」っていう名称もいま初めて知ったわけで、当然知ってるだろうみたいに問い掛けられても…なんだかなぁ。
しばらくするとグラフィックデザイナーだという石田の彼氏が降りてきて(ヒモに吊るされてじゃなくて、ちゃんと階段使って)、ボク以外の3人は酒喰らって、夜半まで4人でわいわいがやがや。
         
こうしてけっこう寒い11月の夜は更けて行く。
ん〜、ここは案外な極楽かもしれない。

end