◆◇◆横浜、来季が見えない◆◇◆
神奈川新聞2008年10月4日(土)リレーエッセイ「木もれ日」



 信じがたいことに、横浜ベイスターズは大矢監督の留任を早々に決めてしまった。いったいフロントはチームを強くしようという気持ちがあるんだろうか?
 球団は、親会社のものではない。監督のものでもないし、選手のものですらない。球団はファンのものなのだ。親会社は球団を手放せばいい。監督だって選手 だって生涯横浜一筋ではない。ファンだけが生涯横浜一筋で、しかも球団から一銭も報酬をもらわず、身銭を切って応援しつづけるのだ。
 フロントはこんなチームにしておきながら給料をとっている。普通の企業だったら倒産していてもおかしくない。監督どころか球団社長からまず責任をとるべ きだ。
 今年、横浜ファンは四月から憂鬱な日々を送ることを強いられた。しかし、もっと悪いことは、来シーズンのチーム構想がまったく見えてこないことだ。親会 社は巨人が強くなることを願っているようにしか見えない。「中傷だ」というのなら、横浜を強くするビジョンを示してほしい。
 横浜の勝率は、自チームから生れるであろう首位打者の打率を下回ることがほぼ確定している。プロ野球史に残る珍記録だ。さらにもう一つ、勝ち数でさえ、 自チームから生まれるであろう本塁打王の本数を下回る可能性がある。こんなチームの体制を存続させたら道理が通らない。スポーツが子供にとって教育だとす るなら、現体制の存続は、「何をしても関係ない」「責任なんか誰もとらなくていい」という、最悪のメッセージを子供たちに送ることになる。
 今年の横浜のクリーンアップは三人とも生え抜きだ。よそから掻き集めた巨人のクリーンアップとはわけが違う。しかも三人とも右打者だ。左打者全盛の近年 のプロ野球でこれは特筆に値する。この若いクリーンアップはプロ野球の歴史に残る可能性を持っている。投手陣さえ再建されれば優勝できる。しかし、その方 策がまったく見えてこないのだ。
          (ほさか・かずし、作家、ファン歴44年)
注)内川打率.381  横浜勝率.328  村田本塁打43 横浜勝数 45 (10月7日時点)

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